仲の良い兄弟ともなると口が軽いもので、特に一松と十四松となると尚更だった。
仲良く猫ちゃんとそれに立ち向かう芋虫ごっこをやった後、なんともなしに頭に浮かんだ話題を十四松は口にする。
「一松にーさん」
「んー?」
「最近カラ松にーさんとはどっすか!?」
「どうってなにが?」
「嫌ですぜにーさん、カラ松にーさんと恋人じゃないっすかー」
半年ほど前、一松とカラ松が恋人として付き合い出したと、十四松は一松との世間話の延長で知った。兄弟にしては何か互いを意識している雰囲気が以前からあっただけに、十四松はその事実にさして驚きはしなかった。
「あーでしたなー」
その関係にこれまで関与しなかったが、今更ながら気になって聞いてみればこの気のない返事である。
「あにさんドライですな」
「んーまあ、クソ松から告白して付き合い始めたわけだし」
「まさかの一←カラすか!一カラじゃなくて一←カラすか!?」
「ひひ、」
「人が悪いですぜにーさん!」
「あいつこんなゴミクズに惚れやがって、ゴミクズとクソでお似合いってか」
「自分と恋人を汚物でまとめるとかスッゲー外道すなー」
ゴミクズとクソはどちらが汚いのか。そんな疑問を頭の端に置いてしまった十四松を知ってか知らずか一松は口を開く。ひ、と顔を歪めて笑う一松に十四松は僅かにだがカラ松に対して同情の念を抱いたが、それ以上に一松が話す内容が気になってしまう。
この流れなら多分にカラ松についての話だろう。そう予測すれば低くてねっとりとした声が「二月前クソ松が」と話し始める。
「二月前クソ松が怪我して寝込んだじゃん」
「階段でかっこつけて転げ落ちた時すね!」
「あいつ丈夫が取り柄のくせに布団から出られないくらいダウンしやがって。無駄にかっこつけだから弱った姿を見られたくないだろうと思って様子を見に行ってやった」
「弱者にそんな仕打ちするんすか! 人が悪いじゃなく悪い人でっせ」
「だろ? 追い討ちをかけるようにお粥を食べさせて手当てもしてやってとどめに夜通しクソ松のそばにいてやったし。これであいつの自尊心はめちゃくちゃだ」
「オーバーキルとかえげつないっすな!!」
あの時のカラ松は本当にボロボロで弱っていたのになんて仕打ち!思わず十四松は猫目になる。
「そういやクソ松、あの時まで虚勢かまして『ありがとう、いちまつ』とか言いやがって。髪の毛滅茶苦茶になるくらい掻き回してやって『お礼は要らないからもっと僕に頼って』って言ってやったし」
「折角のお礼を断った挙げ句に強がりなカラ松にーさんにスッゲー苦行じゃないっすか!」
「だろうね。顔真っ赤にして震えていやがったひひっ」
怒り大爆発じゃないっすか!! 恋人なのにこんな仕打ちをするなんて、やっぱり一松はMではなくSなのだと十四松は考える。
「それで元気になって調子乗られても癪だから、怪我が治って一月はセックスしてやらなかったからね」
「俺モノホンの放置プレイ垣間見ちゃった!」
「代わりに怪我の痛みがまだ残るのにクソ松を羽交い締めしてやったから。しかも手加減して哀れんでやれば怒りに無言になってやがった」
「いっそ一思いにとどめをさす優しさはないんすかにーさん!」
「あると思ってんの? そんで返す言葉もないかって笑いながら黙っちまった口にキスして煽ってやったから」
「羽交い締めして身動きとれないカラ松にーさんになんてことしてんすか!」
放置プレイなのにキスしてしまうとは一松も生殺し状態になるのにすごい、とカラ松をいじめているのに十四松は感心してしまう。
「そんでこの間、あのクソ松ときたら『付き合い始めて半年になったから』とかってエスパーニャンコのぬいぐるみ寄越しやがって。大人にぬいぐるみってセンスほんとクソ過ぎだから」
「あちゃー、やっちまったっすなー」
「猫には罪はないから貰ってやったけどあそこまでクソでどーすんの。恥ずかしくて社会出せないし誰にも見せられないから」
「そこはカラ松にーさんが一生ニートなら問題ないっすよ」
「あーだねえ。クソ松を差し置いて僕が働きだせばこれほどない屈辱ないだろうし、一生ニートで僕んとこ置いとこ」
「屈辱プレイに束縛っすかバイオレンスはあかんですぜにーさん!」